斧節

混ぜるな危険

論文誌の重要度=インパクトファクタ

『身体感覚で『論語』を読みなおす。 古代中国の文字から』安田登
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
・『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるときレイ・カーツワイル
・『AIは人類を駆逐するのか? 自律(オートノミー)世界の到来』太田裕朗
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
・『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン

 ・論文誌の重要度=インパクトファクタ

 論文誌には、その重要度を測る物差しがあり、業界でいうところのインパクトファクタがそれに当たる。インパクトファクタは、掲載論文1本あたりの引用回数をもとに計算される。たとえばインパクトファクタが30の論文誌とは、掲載された論文が平均して30回ずつ陰陽されたことを意味する。このインパクトファクタの値はまさにピンきりで、下は0.2を切るような論文誌から、上は60に迫るようなものまでさまざまだ。
 そして、それぞれの論文誌は、少しでもインパクトファクタを上げようと血眼になっている。陰陽回数を稼げそうな研究成果を他誌に先んじて掲載しようと情報のアンテナを張り、また、そうした論文の投稿を促すため、論文誌としてのクオリティを保とうとしている。反対に、新たな知見を生まず、それゆえ引用される可能性の低い「悪い実験」が、格付けの高い論文誌に掲載されることはない。


【『脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦』渡辺正峰〈わたなべ・まさたか〉( 中公新書、2017年)】

 個別の論文も同様で、被引用数指標(Citation Metrics)やh-indexなどがある。

 ただし、被引用数指標は一種のわかりやすい格付けであって、それが全てではない。最先端をゆく研究は理解されにくいがゆえに引用されない。ちょっと考えればわかることだが、ガリレオの地動説を引用する学者など17世紀のヨーロッパには一人もいなかったことだろう。相対性理論も同様だ。アインシュタイン1921年に「光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明」でノーベル賞を授与されたが、選定委員が相対性理論を理解できなかったためと言われる。相対性理論を観測によって実証したアーサー・エディントンは、「一般相対論を理解しているものは世界中に3人しかいないと聞いてますが……」とジャーナリストから質問され、しばらく黙した後で「はて、3番目の人が思いつかないが」と答えた。ま、後年にチャンドラセカールをいじめて晩節を汚したが。

 そこで全く個人的ではあるが「悟りの被引用数指標」を考えてみた。もちろん私が読んできた書籍に限られる。順位は参考程度に受け止めてもらってよい。

 1位 ブッダ
 2位 聖書(イエスは実在したかどうかが不明)
 3位 ヴェーダ
 4位 クリシュナムルティ
 5位 道元
 6位 ラマナ・マハルシ
 7位 ルーミー
 8位 マイスター・エックハルト
 9位 ラーマクリシュナ
 10位 龍樹
 11位 エックハルト・トール
 12位 白隠
 13位 鈴木大拙

 大体こんなところだ。当たり前だが日蓮や南無妙法蓮華経は見た例(ためし)がない。