斧節

混ぜるな危険

神経は経験によって変わる

 ・神経は経験によって変わる

・『なぜ今、仏教なのか 瞑想・マインドフルネス・悟りの科学』ロバート・ライト

 どの実践法も、一見簡単そうに見えるため、あまり効果がないのではないかと思われるかもしれません。しかし、神経は経験によって変わっていくという性質を持っています。実践を続けることであなたの脳は徐々に変わっていきます。(中略)
 正確に言えば、物質である脳が、【どうやって】物質でない意識をコントロールするのか、いまだに大きな謎に包まれています。


【『脳を鍛えてブッダになる52の方法 ハーバード大学神経心理学者が教えるブッダの智恵をもたらす脳トレーニング』リック・ハンソン:影山幸雄〈かげやま・ゆきお〉訳(サンガ、2014年/サンガ文庫、2019年/原書、2011年)以下同】

 個人的に横書きの書籍は読まないようにしている。横書きだと漢字の香りが失われてしまうためだ。「途中まで」と思いながらも読了してしまった。

「神経は経験によって変わる」との指摘が腑に落ちる。経験を通して刺戟(しげき)の感度が変わるのだろう。スポーツが上達する様子を思い浮かべるとわかりやすい。スポーツにおける素振りや武術の型は最終的に脱力を身につけるためのメソッドである。初めのうちは力みが動きを妨げる。男性であれば庖丁の扱い方を想像せよ。

●頻繁に活動する脳の領域は血液の流れが増えます。より多くの酵素ブドウ糖(脳のエネルギー源)が必要になるからです。
(中略)
●あまり働いていない神経同士の結合は徐々に衰えて、やがて消え去ります。ダーウィンの進化論の神経版です。最もせわしく活動するものだけが生き残ります。使うか失うかのどちらかです。
●「同時に興奮する神経は相互に結びつく」、これは心理学者ドナルド・ヘッブの著作から引用した言葉です。活性化されたシナプス神経細胞同士の結合)は感受性が増し、それにより新たなシナプスが作られて神経の層構造が厚くなるという意味です。

 ネドじゅんの指摘そのままである。

7つの習慣』(1996年)を皮切りに習慣本が多数刊行されている背景には、こうした脳機能の解明があるのだろう。

 シナプス結合はあたかも人間関係のようでもある。好き嫌いを問わず会う回数が増えれば関係性は強まる。家庭や会社の人間関係を見れば明らかだろう。恋愛関係になった男女は会う回数が多いからこそ付き合いが続くとも考えられる。

 一方、慣(なら)わし(=習慣)と慣れは紙一重だ。慣れに堕してしまえば単なる業(カルマ)である。その意味で正しい習慣は自律心に支えられている。

 瞑想や呼吸法の継続が難しいのは刺戟が乏しいためだ。スポーツに例えると、「できる」と確信を持てるようになるまでの時間が長くかかるような感覚がある。

 しかしながら、ニルヴァーナ(涅槃)には歓喜が伴うもので、面壁九年(めんぺきくねん)と謳われた達磨大師は、手足が腐るまで瞑想を続けたというのだから、苦痛を忘れるほどの歓喜に包まれていたことだろう。

 凡夫は「気づき」を維持することすら難しい。