斧節

混ぜるな危険

皆が他人のために利用され合っている

『人生論ノート』三木清
・『ナポレオン言行録』オクターブ・オブリ編
・『読書について』ショウペンハウエル:斎藤忍随訳

 ・他人に奪われた時間
 ・皆が他人のために利用され合っている
 ・長く翻弄された人生
 ・愛と憎とを命令されて行なう者たち

・『怒りについて 他一篇セネカ:茂手木元蔵訳
・『怒りについて 他二篇セネカ:兼利琢也訳

 金持ちゆえに大勢の者たちに詰めかけられる人々を見るがよい。この人々は自分の財産で首を締められているのだ。多くの人々にとって富はいかに重荷であろうか。いかに多くの人々が弁舌を振るい、また自己の才能を誇示せんと苦慮して日夜血を吐く思いをしていることか。いかに多くの人々が快楽の連続で青ざめていることか。いかに多くの人々が大勢の子分たちに取り巻かれて、少しの自由さえも残してもらえないことか。要するに、これらの人々を最下位から最上位までずっと見渡してみるがよい。ここには訴訟の相談に乗る者がおり、また証人になる者がいる。あそこには人を審問する者がおり、また弁護に立つ者がいる。またあそこには判決を行なう者もいる。しかし誰ひとりとして自分自身に対する権利を主張する者はない。互いに他人のために利用され合っているだけだ。


【『人生の短さについて』セネカ:茂手木元蔵〈もてぎ・もとぞう〉訳(岩波文庫、1980年/岩波クラシックス、1982年ワイド版、1991年大西英文訳、2010年『生の短さについて 他二篇』)】

「また自己の才能を誇示せんと苦慮して日夜血を吐く思いをしていることか」で大笑いした。思い当たるユーチューバーやXのアカウントが浮かんだためだ。

 特にレシピ系の競争は熾烈(しれつ)を極めているようで、「よくもまあ」と溜め息が出るほど多量のポストを投稿している。絨毯(じゅうたん)爆撃かよ(笑)。

 で、一冊のレシピ本を出すや否や、著書へのリンクまみれとなり、メーカーとのコラボ商品が発売されると広告ポストだらけになる。

 皆が皆、自分を高く売ろうと必死だ。マズローの欲求段階説に承認欲求がある。マズローは他者からの尊敬を低く評価し、自己信頼の大切さを説いた。

 他人のために生きている人生だと個性を発揮することができない。個性とは自分らしさである。ここからが難しいのだが自分らしさとは、特定の感情や行動のパターンおよび癖と考えてよい。幼児期に遺伝要因と環境要因で形成される素質・性質・気質のようなものだ。

 個性を発揮するためには自分のやりたいことをやればいい。ただ、それだけのことだ。こう言うと必ず、「やりたいことが見つからない」という愚か者が出てくる。実際に眼の前にいれば、「豆腐の角に頭をぶつけて死んで欲しい」と言えるのだが、折角ブログを読んでいる見知らぬ人には言いにくい(笑)。

 どんな人にも「これをやっている時が楽しい」と思える何かがあるはずだ。いきなり職業を思い浮かべるからわからなくなるのだ。

論語』に「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず」とある。「好きこそものの上手なれ」の語源である。だが、「楽しむ者」には及ばないのだ。

 個性を発揮することは、「自分を楽しむ」人生と言ってよい。自分自身の人生を歩む人のみが周囲の人を照らすことができる。