斧節

混ぜるな危険

カリスマへの求心力に依存する組織

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽
・『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー

 ・カリスマへの求心力に依存する組織

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル

 実はたくさんの参加者が集まる集団を形成するための手っ取り早い方法は、人を惹きつけるカリスマがいてくれることです。
 強いビジョンをもち、容姿端麗で才能に恵まれたカリスマは、周囲の人を惹きつけます。その【カリスマを中心に集団を作っていくやり方は、手っ取り早い近道のように思えるかもしれません。しかし、これは一種のドーピングのようなものです】。カリスマに依存した集団は立ち上がりのスピードは速いですが、構造としては非常にもろいという弱点があります。
 カリスマの存在が、【実質的にはその集団にとって最大の急所です。カリスマを叩くことによって、その集団を停止させることができるからです(単一障害点)】。カリスマにスキャンダルが見つかったり、やる気がなくなったり、才能が涸れたり魅力がなくなったりした瞬間、集団は余儀なく消滅へ向かうでしょう。
 そのため、一人のカリスマの求心力によって支えられている集団は短命です。参加者はカリスマの存在に依存しているため、個々人が自分で考えて行動し、全体を改善していく自律性も生まれません。
 初期の少数の集団を形成するために、カリスマの力に頼るのはスピーディで楽です。ただし集団をどんどん拡大させていくときには、カリスマに依存するせいでかえって苦労します。自分に近い属性の人間を魅了することはできても、自分が普段接しない人たち、違う価値観の人を魅了するのは難易度が高いためです。そのため、こういう集団の規模はさほど大きくならない宿命にあります。


【『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』佐藤航陽〈さとう・かつあき〉(幻冬舎、2022年)】

「今頃読んでるの?」という声が聞こえてきそうだが、本読みの習性として「確実に面白いとわかっている本は後回しにする」ことが少なからずあるのだ。ま、隠し球というか、懐刀(ふところがたな)というか、非常食というか……そんなようなものだ。

 でだ、今頃になって書評を書くことにも深い意味があった。なんと、1500円+税の本書がamazonで1089円という破格で売られているのだ。一家に一冊ではなく一人一冊の購入をお勧めしよう。

 佐藤は福島県の母子家庭で育った。世帯年収が100万円台だったという。18歳になるまでパソコンに触れたことがなかった。早稲田大学に進学したものの学費の支払いが困難であることに気づき、大学1年の時に起業した。それ以降、経営者の道を走り続けている。2015年には東証マザーズに上場した。その後、生き馬の目を抜くようなインターネットの世界では大企業の動きの鈍さが足枷(あしかせ)になることを嫌ってメタップスの経営から外れた。

 佐藤航陽は最近になって、自分のYouTubeチャンネルで「実は曽祖父が永野修身〈ながの・おさみ〉である」と打ち明けた。

「戦わざれば亡国と政府は判断されたが、戦うもまた亡国につながるやもしれぬ。しかし、戦わずして国亡びた場合は魂まで失った真の亡国である。しかして、最後の一兵まで戦うことによってのみ、死中に活路を見出うるであろう。戦ってよしんば勝たずとも、護国に徹した日本精神さえ残れば、我等の子孫は再三再起するであろう。そして、いったん戦争と決定せられた場合、我等軍人はただただ大命一下戦いに赴くのみである」と日米戦争の直前に語ったあの永野修身である。

 私は皇統以外の血統に重きを置かないのだが、永野修身の子孫ともなれば何らかの精神的遺産を受け継いでいる可能性はあるだろう。

 トヨタやホンダが生き残っているのは、カリスマ創業者が成した仕事を「仕組み化」できているためだ。佐藤はむしろ、これからの組織は自律・分散型組織が望ましく、生態系の慣性力を重視した方がよいと指摘する。

 カリスマ依存の組織は中央集権型である。創価学会と左翼が似ているのは、スターリン毛沢東などの独裁体制と池田大作の絶対性が響き合っているからだ。

 既に創価学会が日本で宗教的な役割を果たしているとは言い難く、単なる選挙支援組織となってしまった。それでもまだ数百万票を叩き出すのだから政治的な影響力は侮れない。むしろ、政治的姿勢の不鮮明さこそが問題だろう。

 生命体が生老病死を奏でるように、組織もまた成住壊空(じょうじゅうえくう/四劫)を繰り返す。長期間にわたって拡大し続ける組織は存在しない。かつての帝国や国家ですら興亡は避けられないのだ。

 何度も書いてきた通り、創価学会は池田党である。日蓮ブッダよりも池田を重視する人々の集まりだ。宗教性は極めて薄く、人の生き方や人間としてのあり方を説く内容が殆どである。仏道修行の根幹であった勤行すら簡略化する始末である。

 どう考えても創価学会が今後発展することはないだろう。とすれば現執行部はせめて理想的な縮小の道を模索するべきだ。

 個々の会員にあっては、日蓮回帰あるいはブッダ回帰を目指すのがいいように思う。

世界2.0 メタバースの歩き方と創り方