「夏は来ぬ」という童謡が好きで時折聞いている。私が夏生まれのせいか。作詞は佐佐木信綱。若い人のために説明しておくと、「来ぬ」の「ぬ」は完了を示す助動詞で「夏は来た」との意。
つい先日、3番の歌詞が耳に入ってきた。
橘(たちばな)の 薫る軒端(のきば)の
窓近く 蛍飛びかい
おこたり諌(いさ)むる 夏は来ぬ
「おこたり諌(いさ)むる」などという言葉があったとは。それにしても「蛍がなぜ?」と思い調べてみた。
中国に「蛍雪(けいせつ)の功」という言葉があるようだ。油も買えない貧しい若者が蛍を集めて夜の勉強を行った。また、別の若者は冬の夜に、窓際へ机を置き、積雪が反射する月光を頼りに勉学に励んだ。これらの故事が「蛍の光 窓の雪」になるわけだ。
つまり、「おこたり」とは学ばないことを意味している。学べば学ぶほど心の空間が広がる。