斧節

混ぜるな危険

皇統という文脈が社会の総意として受け継がれたという事実が重要

・『三島由紀夫と「天皇」小室直樹
・『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論小林よしのり
・『愛国左派宣言』森口朗

 ・皇統という文脈が社会の総意として受け継がれたという事実が重要

 人間の遺伝子が組み込まれている染色体には、X染色体とY染色体の2種類の染色体があり、Yはずっと形が変わらず、受け継がれていくとされます。そして、このY染色体を持つのは男性のみであるため、Y染色体により、男系祖先をたどることができるということから、男系の皇統もY染色体による科学的に証明できるという主張があります。
 しかし、このような主張は危険なことかもしれません。昔の天皇の毛髪や爪の遺伝子と現在の天皇の遺伝子検査をやってみろ、という話になりかねないからです。仮に、その検査の結果、「血の繋がりがない」と判定されれば、不都合な真実となります。Y染色体の話を持ち出す男系支持派の有識者はそこに話が結びついたときにどうするのでしょうか。
 皇統は生物遺伝学などで立証されるようなものではなく、そのような文脈が社会の総意として受け継がれたということが重要なのです。皇統は科学を超越した精神文化の累積であり、合理性とは無関係に受け継がれたものです。


【『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄〈うやま・たくえい〉(悟空出版、2019年)】

神話の価値観」関連テキスト。蒙(もう)を啓(ひら)かれた一冊で、女系をも見据えた先進性に驚かされた。

「日本には天皇陛下がいたおかげで奴隷が存在しなかった」とは、これまた武田邦彦の指摘である。つまり一君万民という日本独自の平等思想が階級社会を防いだわけだ。士農工商を身分とする見方はいまだに根強いが、昨今では職能による分け方と考えられている。穢多非人や部落という差別はあったが、階級としての奴隷が存在しなかった歴史的事実は大いに誇るべきだ。

 日本の場合、国家に先んじて天皇が存在した。すなわち「始めに天皇ありき」が日本の国体である。共和制や共産主義が馴染まないのは当然だ。左翼勢力が「天皇制打倒」を掲げること自体が、いみじくも日本の根幹が皇統にあることを雄弁に物語っている。