斧節

混ぜるな危険

無念であること

 ・無念であること

・『福本伸行 人生を逆転する名言集 2 迷妄と矜持の言葉たち福本伸行著、橋富政彦編
・『無頼伝涯福本伸行
・『銀と金福本伸行
・『賭博黙示録カイジ福本伸行

 無念であることが
 そのまま“生の証”だ(『天 天和通りの快男児』)


【『福本伸行 人生を逆転する名言集 覚醒と不屈の言葉たち』福本伸行〈ふくもと・のぶゆき〉著、橋富政彦〈はしとみ・まさひこ〉編(竹書房、2009年/竹書房新書、2013年)】

 本物の古書店は目録で勝負する。要は書籍タイトルで物語を編むのだ。そこに至るには、かなりの量の狂気が必要となる。あと資金も。ま、古書組合に加盟してないと無理だわな。私の古本屋仲間のうち数人は、オンラインで開始した後で組合に参入し目録に着手した。かつて仲間内で軽井沢へ旅行をしたことがあった。本好きが集まると「同病相楽しむ」ところがあって心地いい。結局、古書店巡りとなってしまい、ある者は借金をしてまで本を買い漁っていた。

 そこまでは行かないにせよ、書籍を辿ると思わぬ発見がある。根を張り巡らせば、予想外の方向へ枝が伸びるようなものだ。昨日書いた通り、本はまとめて読むに限る。

 福本作品の魅力は人間の欲望を見据えたリアリズムにある。画風はやたらと鋭角が目立って、とても魅力的とは言い難い。それでも一部読者から圧倒的な支持を得ているのは、人間の洞察が文学と匹敵するほど深いためだろう。

 三木清が説く断念よりも、私には福本の言葉の方がしっくり来る。無念とは願望が潰(つい)え去った後に残った空白だ。そのスペースが後々何かを書き込む余白となる。あるいは何らかの足跡(そくせき)が刻まれることだろう。満腹であれば何を食べても美味しく感じない。一定の空腹が身体(しんたい)のメカニズムを正しく調(ととの)えるのだ。

 私は福本の麻雀漫画は読んでない。麻雀をやらないので。っていうか、ギャンブルは一切しない。基本的にスポーツマンなので実力勝負が好きなのだ。それでも人生には賭けの要素がある。自分で選べないことがあまりにも多いからだ。まず親を選ぶことができない。無念である。就職や結婚も一種のギャンブルといえよう。住む場所も不確定要素が多い。「住めば都」なんてのは妥協の産物だろう。あるいは何らかの認知バイアスか。

 無念の風に吹かれながら淡々と歩むのが人生である。欲望が満たされると、その後の不幸がでかくなるのだよ(笑)。