斧節

混ぜるな危険

学会幹部の子供

 話を聞きながら、父と母のことを思い出した。二人とも外ではお節介焼きで困っている人に手を差し伸べていた。でも、結局は恩を仇で返され、という繰り返しだった。それでも、二人は「誠意をもって人に接すれば相手は変わる」ということを信条に、人の親切にし続けていた。私にはあんなに冷たいのに。


【『催眠ガール』大嶋信頼〈おおしま・のぶより〉(清流出版、2019年)】

 平凡な女子高生の成長物語である。普通の人が抱える我慢とストレスがよくわかった。自分の異常さも(笑)。読みながら幾度となく、「なぜそこで黙ってる?」「なぜそこで言い返さない?」「殴るなら今だぞ!」と思った。ま、私からすれば「病気」と言っていいメンタル状態である。

 そんな女の子がミルトン・エリクソン心理療法催眠療法)と出会い、少しずつ自信が芽生えてくる。いつしか大人たちから称賛され、友人にも大きな影響を及ぼす存在となっていた。

 両親が示しているのは「平凡な悪」だ。特に母親が酷い。子供に対して否定的な発想しかできず、事あるごとに足を引っ張るのだ。私の親より酷いよ。

 ミルトン・エリクソンの著書は数冊挫折しているのだが、本書は良質なエリクソン入門となっている。尚、私の好みではないが、げみ氏の表紙イラストがよい。