問題なのは、自民党執行部の誰もこの交渉が石井幹事長主導で進められていたとは思っていないことである。交渉の実権を握っているのは公明党の支持母体、創価学会の佐藤浩副会長である。
かつて公明党は竹入義勝、矢野絢也両委員長、市川雄一書記長らが学会を支持母体としながらも、党の独自性を維持しようと努力してきた。最近の公明党は学会、なかでも佐藤副会長に主導権を握られ追従するかのような態度を取っている。自民党も佐藤副会長と直接折衝したほうが、結論を出すのが早いので、そちらのパイプを優先するようになった。健全な政党と政党の関係でない。
公明党に太田昭宏前代表らがおり、佐藤氏とは別のパイプもあった時は意思疎通もできたが、岸田文雄政権となりそうしたルートもなくなり、佐藤副会長の力がさらに強くなった。このため、強硬論で押す佐藤副会長のいわば言いなりとなり、石井幹事長が「信頼関係が地に落ちた」などと発言する羽目となった。