・小室直樹が指摘する創価学会の失敗 その一
・小室直樹が指摘する創価学会の失敗 その二
・小室直樹が指摘する創価学会の失敗 その三
小室●日蓮は法華経こそカノンだという。だとすれば、日蓮信徒としてまずなすべきことは、第一に法華経のテクスト・クリティークをして、これが日蓮宗として正しいテクストだということの確定であるはずです。第二にそれに注釈をつけて、法華経の解釈としてこう読むべきだ、ということを決めないことにはどうしようもないでしょう。ところがよく見ると、それを池田大作は全然やっていないのですよ。解釈権の確立があって、初めて創価学会は真の日蓮正宗であると自己主張ができるんです。
山本●だから池田大作は変なんです。日蓮正宗の本山に、わたしは間違っておりましたとおわびして、自分の解釈権を放棄したわけなんです。そうなりますと創価学会の存在理由がなくなる。
小室●ルターが法王のところへ行って、自分の解釈は誤りでした、といったら、宗教改革はあり得ない。
山本●宗教改革というのはルターの解釈権の主張ですね。特に「ロマ書」においてうるさいくらいやっている。だから池田大作が、自分に法華経の解釈権があるんだ、全員法華経に帰れ、とやれば日蓮正宗のリフォーメイションになって、彼は日蓮正宗のルターになったかもしれない。ところがそれを放棄して本山に謝りに行った。
となると信徒団体の宗教運動、いわゆるレイ・ムーブメントだけになってしまう。レイ・ムーブメントはお寺の解釈に従うべきただそれだけの団体で、本山に対して抵抗できない。
【『日本教の社会学 戦後日本は民主主義国家にあらず』小室直樹〈こむろ・なおき〉、山本七平〈やまもと・しちへい〉(講談社、1981年/ビジネス社、2016年/新装版、2022年)】
「宗教改革の本質は解釈権の確立にある」との指摘が鋭い。「レイ・ムーブメント」の意味がよくわからないのだが、YMCAのような存在になることを意味しているのだろう。
カノンとは正典のこと。光学機器メーカーのキヤノンの社名由来としても知られる。
「日蓮大聖人御書全集」の発刊は戸田城聖の慧眼(けいがん)であったが、真偽不明の遺文を盛り込んだところを見ると、とても世界展開を考えていたとは思えない。たとえ分量が少ないにせよ、真蹟のみを取り扱うべきであった。
佐藤優は『人間革命』と『新・人間革命』を新約聖書や使徒言行録に準(なぞら)えているが噴飯物の主張と言わざるを得ない。悟っていない人物の名義で、別の誰かが書いた著作を経文扱いできるわけがない。
そもそも、正典などという考え方は啓典宗教のあり方であって仏教がそれに倣(なら)う必要は全くない。大体、ブッダは文字を残していないのだから。むしろ、拈華微笑(ねんげみしょう)でテキスト主義を嘲笑するのが正しい所作だと私は思う。
尚、佐藤が島田裕巳〈しまだ・ひろみ〉を批判していたので、私の中では島田の評価が上がった。佐藤優の批判は昔から実に用意周到な政治的思惑が隠されている。一度騙されて直ぐに私は気づいた。同じ臭いを発している人物に池上彰や養老孟司などがいる。