・啓典宗教とは
これから本格的に宗教の議論に入る前にコメントを一つ挙げておく。それは、宗教には啓典宗教とそれ以外の宗教がある、ということだ。
これは、イスラム教徒による宗教分類であるが、比較宗教学のために便利な分類でもあるので、この本においても採用したい。
「啓典宗教(revealed religion)」とは啓典(正典=canon, Kanon, cannon)を持つ宗教である。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は啓典宗教である。仏教、儒教、ヒンドゥー教、道教、法教(中国における法家〈ほうか〉の思想)などは啓典宗教ではない。
【『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹(徳間書店、2000年/新装版、2021年)】
日蓮系は本迹一致派と本迹勝劣派に大きく分かれており、前者が所謂(いわゆる)日蓮宗である。まず日蓮自身が法華経至上主義である。日蓮正宗以外が日蓮遺文をどの程度重視しているのかが今ひとつよくわからない。調べる気もないので不問に付しておく。
いずれの立場にせよ、日蓮系は啓典宗教と考えてよかろう。