斧節

混ぜるな危険

小説『人間革命』のゴーストライター

『創価学会を斬る この日本をどうする2』藤原弘達 1969年
『池田大作先生への手紙 私の自己批判をこめて』原島嵩 1980年
『創価学会・公明党 スキャンダル・ウォッチング これでもあなたは信じますか』内藤国夫 1989年

 ・自衛隊に関する主張を180度変えた公明党
 ・バブル前後は事件まみれの創価学会
 ・小説『人間革命』のゴーストライター
 ・渡辺元蔵相の「脱税もみ消し」発言

『落ちた庶民の神 池田大作ドキュメント』溝口敦 1995年
『徴税権力 国税庁の研究』落合博実 2006年

 この九州池田講堂に、93年6月、私は九州旅行の折、立寄った。創価学会九州青年部が小説『人間革命』展をここで開いていると知ったからである。ガラスのショーケースに池田大作氏の「直筆」と書かれた、小説『人間革命』の原稿が陳列されてあるのには、大いに興味をそそられた。小説『人間革命』が、本当に池田氏の書いたものかどうか、本文中とも私は言及しているが、「直筆」原稿なるものを見るのは、なにしろ、はじめてである。
 ショーケースのガラスに触れる位、目を近づけて、驚いた。「直筆」原稿には、一字の誤字・脱字の訂正のあと、書き損じがない――つまり、文章を推敲した跡がまったくないのである。清書原稿そのものなのだ。それは、いくらかものを書いている私にも、すぐに判ることであった。
 創価学会ウォッチャーとして知られる内藤国夫氏が、同じような感想をのべていたので、引用しよう。文中、篠原とあるのは、本書第四章でくわしくふれることになる小説『人間革命』の代作者篠原善太郎氏のことである。

「篠原は『人間革命』を書いたことで本部・聖教新聞社内で特別待遇を受けるに至った。伊東に別荘をもっているのも、学会幹部の中で篠原一人だけ。篠原が書く『人間革命』の原稿を聖教の記者が少しでも手直ししようものなら、怒鳴り込んでそれを元通りに訂正させた。『人間革命』の担当記者だった原田稔や松本和夫らは、自ら取材したというよりも、篠原の手伝いをしたといった方が正確だ。篠原には本部の3階にあった黎明図書館の脇に書斎が与えられ、そこでいつも原稿を書いていた。
山崎正友裁判』の時、裁判官から“『人間革命』は、あなたが書いたものですか”と尋ねられ、池田がいみじくも『私の直筆です』と答えた話は有名。『私が書いた』といわなかったところがミソである。学会系の出版物の中に“『人間革命』を執筆中の池田会長”と題された写真があった。だが、机の上には参考資料の1冊もない。そんな状態で本が書けるわけがないことは、少しでもものを書く苦労を知っている人なら分かるはずだ」
「今、篠原は80歳を過ぎる老人である。『人間革命』が10巻どまりでその続きが出版されないのは、代作者の年齢的な問題のせいである。だが、内容的には大阪参院補選の(池田拘留の)ことを書く直前で終わっている。本当は、それ以降、第三代会長にのし上がるあたりが一番のクライマックスなのに、差し障りも多いのだろう。藤原行正は、本山で篠原に会った時『今、検察のことを書くとまずいので、続編を控えている』と説明を受けたという」(『創価学会・公明党スキャンダル・ウォッチング』)

 この篠原善太郎氏が死去したことも、小説『人間革命』の長い中断を説明しているといえるだろう。


【『池田大作 幻想の野望 小説『人間革命』批判』七里和乗〈しちり・わじょう〉(新日本出版社、1994年)】

ゴーストライター説について考える

 認知バイアスの一つに「ハロー効果」がある。ハローは光輪の意で、後光が差すイメージを描く際に頭の後ろで輝く光のこと。ひとたび権威を認めたり、尊敬・信頼・好意といった感情が芽生えると、何もかもが「よく見えてしまう」認知の歪みだ。ま、「アバタもエクボ」みたいなものと考えてよろしい。そのメカニズムを踏まえると「ハローエラー」と称した方が正確だろう。

 例えばトヨタのクルマを買ったとしよう。彼の目には日産車の優れた技術を伝える情報やホンダ車の好評判は止まらなくなる。そして、トヨタ車に関するマイナス情報を過小評価あるいは無視してしまうのである。

 つまり、崇拝する人物の短所は見えなくなる。たとえ反社会的な行為をしたとしても。

 ハローエラーが最大限に発揮されるのが教祖や聖職者であろう。信仰に基づく絶対的な信頼関係が都合の悪い事実から目を逸(そ)らしてしまうのだ。

 ゴーストライター説については2000年代からウェブ上で指摘する声があった。私自身、そうした指摘を長らく無視してきた人間の一人だ。しかしながら、まだ活動していた頃に「『若き日の日記』を清書する池田SGI会長」とのキャプションを目にした時、たちどころに悟った。

 大前提として「言論出版妨害事件」を軽く考えている学会員が多すぎる。後光が強すぎて実像が見えなくなっているとしか思えない。

ニーチェ「真実を受け入れるのは難しい、抱いていた幻想を壊されたくないからだ」